「いじめの4層構造」という言葉をご存知でしょうか?
いじめ研究の第一人者として知られる社会学者の森田洋司氏が提唱した概念で、いじめは加害者と被害者だけではなく、観衆と傍観者を加えた四層の中で拡大していくという考え方です。
今回は、いじめの本質を理解するために役立つ「いじめの4層構造」という概念について、まとめてみました。
いじめの4層構造とは
円を描いた際、中心にはいじめられている被害者がいます。
それを囲むように加害者がおり、一般的にはこの「2層」だけでいじめを捉えがちです。
どうにかして加害者の行動を阻止できれば、当事者間での問題は解消されると思うからです。
ところが、その続きがあります。まず加害者を囲むように「観衆」がいて、観衆を囲む「傍観者」もいるのです。
観衆とは、直接的な行動には出ないが、被害者のいじめられている様子を見て面白がっている生徒たちです。
傍観者とは、俗に言う「見て見ぬふり」に徹する生徒たちであり、いじめを止めさせようとする「仲裁者」も傍観者に分類できます。
こうした「被害者」「加害者」「観衆」「傍観者」の関係性を、いじめの4層構造と呼ぶのです。
観衆によるいじめの拡大
加害者からプロレスごっこを強要された被害者は、皆の前で恥ずかしい思いをした、技を掛けられて痛いと感じた・・・とします。
周囲が止めに入ったり、引いてしまうほどの悲惨な行為とは言い切れないため、観衆はその様子を見て笑うでしょう。
観衆が楽しんでいると思えば、加害者はプロレスごっこの回数を増やすかもしれません。
もしくは、観衆から「今日はやらないの?」と望まれることもあるはずです。
加害者のいじめ意識が弱ければ、観衆の反応や言葉が燃料となり、行為はどんどんと拡大していくのです。
また観衆の面倒な点は、秘めている悪質性にあります。場合によっては加害者よりもヒドイかもしれません。
・もっと楽しみたいからと、より刺激的な行為を加害者に求める
・楽しいなどの気持ちを表情や声に出し、加害者や観衆のいじめに対する意識を麻痺させる
・囃し立てることで傍観者が観衆になったり、クラス全体を巻き込む要因を作り上げる
・物足りないと思い始めて、観衆から加害者に転じる
・教職員からいじめ問題を尋ねられても、行為には及んでいないため言い逃れができる
プロレスごっこを例に挙げましたが、落書きや仲間外れ、悪口などのいじめでも同じことは起こります。
それだけ観衆のいじめへの影響は大きいのです。
傍観者の立ち位置がいじめ隠蔽に繋がる
教職員に事実を伝えたり、危険も顧みず止めに入るなど、傍観者の勇気ある行動によっていじめは終わるかもしれません。
ただし、協調性を重んじる日本では、自分を犠牲にしてまで被害者を守ろうとする生徒は多くないでしょう。
そして、教職員によるいじめ調査が始まっても、同じように傍観者であり続けるのです。
これはしかたのないことかもしれません。
なぜなら、「傍観者=スクールカースト下位」の可能性が高く、行動に出れば自分がターゲットになるかもしれないと恐れるからです。
また教職員にばらされないため、クラスの一体感を高めるため、加害者は傍観者にいじめを強要するかもしれません。
いじめの4層構造において、被害者から最も遠い存在の傍観者にまで責任が生じれば、クラス全体での隠蔽が始まります。
こうなってしまうと、教職員がいじめの現場を目にする以外、事実を知る方法はなくなります。
さらに、教職員や学校が傍観者となるケースもあります。
いじめ防止対策推進法が誕生するきっかけとなったと言われている大津市中2いじめ自殺事件はその典型的な事例かもしれません。
参考記事:大津市中2いじめ自殺事件の内容・あまりに酷すぎる大人の対応
いじめられているお子さんを助けたくても、身近な協力者さえ”傍観者”では、解決できる問題も進展しないでしょう。
いじめ問題の追及とその難しさ
いじめの4層構造を理解すると、現場では複雑な感情が入り混じっているのだと分かります。
加害者が悪いのは当然として、観衆や傍観者に責任はないのかという疑問さえ抱くでしょう。
ご自身の子供がいじめられていると知れば、関わっている人間全員が悪いと思うはずです。
傍観者に対しても、見ていないで打ち明けろと怒るかもしれません。
ただし、当事者になってみないと気持ちは分からないのです。
例えば、会社やママ友の間で同じことが起こったら、あなたは自分を犠牲にして動けるでしょうか?きっと難しいはずです。
そのため、学校に相談するなどの「他人任せ」ではいけません。
子供との話し合いはもちろん、証拠取得や被害状況の確認をしてください。
証拠があれば、加害者の親に注意することも可能です。
被害が深刻化しているなら、教育委員会との連携、専門機関による法的手続きも必要となります。
「いじめの4層構造」まとめ
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
今回はいじめ研究の第一人者として知られる社会学者の森田洋司氏が提唱した「いじめの4層構造」という概念について、まとめてみました。
いじめの状況と対応は、4層構造における生徒の動き次第で変わります。
子供をいじめから守るためには、こうした生徒たちの立ち位置を理解しておくことも大切です。
参考URL
http://www.pref.fukuoka.lg.jp/uploaded/life/68225_14381500_misc.pdf
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