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認知症の家族の家出や失踪の原因と捜索方法
最近、認知症の方が家出・失踪して行方不明になるケースが増えていて、社会問題にもなっています。
警察庁が公開しているデータによると、2015年度に行方不明者届が出された家出・失踪者のうち、認知症または認知症の疑いにより行方不明になった人は、全体の14.9%を占めていたそうです。
今回は、認知症の方が家出して行方不明になってしまう原因と捜索方法をご紹介します。
認知症の方が家出して行方不明になる原因
認知症の徘徊が家出につながる場合も
認知症の方が家出して行方不明になる原因の徘徊は認知症の代表的な行動障害の一つで、認知症の初期から中期にかけて特によく見られると言われています。
周りの人からは意味もなくウロウロ歩き回っているように見えるかもしれませんが、認知症の人が徘徊するのには理由があります。
認知症の症状である「見当識障害」により、今いる場所や自分が置かれている状況が理解できなくなるため、自分の部屋や失くした何かを探すために歩き回ることが多いそうです。
今いる場所が自分の家ではないと認識した場合は、自分の家を探しに外に出かけてしまい、そのまま家に戻れなくなることもあります。
つまり、認知症の場合は、本人に家出する意思がなくても、家の外への徘徊の結果、家出につながることもあるのです。
徘徊する家族を怒るのは逆効果
認知症の方は、居心地が悪いと感じる環境にいると、その場を離れて安心する場所に帰ろうとする傾向があります。
家族にとっては、徘徊することで行方不明になる危険性もあり、とても心配なので、つい怒ったり、無理にでもやめさせようとしたりしてしまいますが、多くの場合、逆効果になってしまいます。
家族の方は大変だと思いますが、できるだけ認知症についての理解を深めて、徘徊して家出する家族のことを怒らずに、本人にとって居心地のよい環境を作るように心がけることが大切です。
認知症の方が家出して自殺・死亡する可能性は?
初期の認知症の方が家出・失踪した場合、自殺を考えている可能性も!
認知症の方が家出しても、自殺をする可能性はないだろうと考える方も多いかもしれません。
たしかに、認知症が進行している場合は自殺をするという考えに至ることは少ないようです。
ただし、認知症の初期の場合には自殺するために家を出た危険性もあるので、注意が必要です。
認知症の初期には抑うつ症状がみられるケースも多く、些細なことから絶望感にとらわれて自分を責めたり、急に自殺したいという気持ちが高まってしまうこともあるそうです。
また、自分が認知症であることを自覚して、家族にこれ以上迷惑をかけたくないという気持ちから自殺を考えるようになる方もいらっしゃいます。
家出・失踪から3日以上経過すると死亡率が急上昇?
2013年度中に認知症が疑われる状況で警察に行方不明者届が出された方を対象として、桜美林大老年学総合研究所の鈴木隆雄所長らが厚生労働省から研究費を受けて実施した調査の結果では、行方不明になった当日中に発見された場合の生存率は82.5%ですが、翌日には63.5%、3~4日後には 21.4%と急激に低下することが示されました。
5日目以降には、生存者はゼロ、つまり死亡率が100%という結果だったそうです。
この調査は、2013年度中に認知症が疑われる状況で警察に行方不明者届が出された10,322人のうち死亡した388人を含む776人の家族に調査票を郵送し、全項目について回答を得られた204人を分析して行われました。
この調査によると、亡くなった方の4割以上が軽度の認知症だったそうで、研究班は軽度の認知症だから大丈夫という先入観を持つのは危険だということを警告していたそうです。
認知症のご家族が家出・失踪して行方不明になった場合は、たとえ認知症の程度が軽い場合でも、すぐに捜索を始めましょう。
家出・失踪して行方不明の認知症の家族の捜索方法
警察に捜索願いを出す
認知症の家族が行方不明になってしまったら、まずは警察に捜索願いを出しましょう。
捜索願の出し方や必要なものなどは、こちらの記事にまとめていますので、参考にしてみてください。
参考記事:警察への捜索願いの提出方法と届け先
警察に捜索願いを出す際は必ず本人が認知症であることを伝えましょう。
認知症の場合、事故に遭う危険性もあるので、優先的に捜索してもらえるかもしれません。
捜索願いを出しても探してもらえない場合もある
ただし、行方不明者の捜索は警察の仕事として優先順位が高いものとは言えないため、他に重大な事件などの捜査で警察が忙しい時には、積極的に探してもらえる可能性は低いです。
大手Q&Aサイト「Yahoo!知恵袋」には認知症の家族の捜索願いを出したという方から以下のような質問が投稿されていました。
徘徊癖のある認知症の母(79歳)が行方不明になり、探しています。警察に捜索願いは出してはいますが、何の情報も得られないまま、もう10日経ちました。
普段はGPS機能付の携帯電話を家の鍵にくくりつけ、出かける際には身につけるようにしていたのですが、その日は鍵もかけず何も持たずふらっと出て行ってしまったようです。過去も何度か同じようなことがありましたが、運よく一般の方からの通報で1日のうちに無事、戻ることができておりました。
警察は、特に積極的に動いてくれるわけではなく、「行方不明者リストに登録してあり、通報されればヒットするシステムになっているから」と、待ちの姿勢でしかありません。確かに何の手がかりもないので捜索作業のしようもないのかもしれませんが……。
こんな場合、捜索を協力してもらえるところは警察以外にありますでしょうか? ちなみに、消防署にもお願いに行きましたが、最終的には「警察に言ってください」と言われました。
何か妙案はありませんでしょうか? 私は、何をすればいいでしょうか?引用元:「Yahoo!知恵袋」(http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1347870358)
警察に捜索願いを出しても、残念ながら、この方のように積極的に探してもらえない場合もあります。
行方不明者・失踪者捜索のプロである探偵事務所に依頼する
警察に捜索願いを出しても、この方のように積極的に探してもらえない場合もあります。
その場合、一番確実なのは、行方不明者・失踪者捜索のプロである探偵事務所に依頼することです。
ただし、探偵事務所の中には悪徳な業者も存在するため、注意が必要です。
当サイトの「行方不明者の捜索の依頼先として信頼できる探偵の選び方」では、信頼できる探偵事務所の選び方をご紹介しています。
また、「家出人・失踪人捜索のプロによる無料相談が受けられる探偵事務所一覧」では信頼できる探偵事務所の選び方でご紹介しました5つの条件を充たす探偵事務所の中から、行方不明者・失踪者捜索の優れた実績を持つ探偵事務所を厳選してご紹介しています。
行方不明者・失踪者捜索のプロである探偵事務所に依頼する
認知症で行方不明になって、既に警察などに保護されていて、本人が自分の名前や住所を覚えていないという場合は、厚生労働省や警視庁が公開している身元不明の認知症高齢者等に関する情報公開用の特設サイトに載っている可能性もあります。
この特設サイトは、認知症高齢者の行方不明者が増えていることから、厚生労働省が都道府県圏域を越えた捜索活動をスムーズに行うために設置したサイトです。
認知症の家族の家出や失踪の原因と捜索方法まとめ
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
今回は認知症の方が家出して行方不明になってしまう原因と捜索方法をご紹介しました。
認知症のご家族が家出・失踪して行方不明になった場合は、認知症の程度が軽い場合でも、すぐに捜索を始めましょう。
また、「徘徊高齢者SOSネットワーク」などを利用して、行方不明になることを予防することも大切です。
厚生労働省の推計によると、2025年には認知症患者は700万人を超えて、65歳以上の5人に1人が認知症という時代に突入することが予想されるとか。
認知症の方が家出して行方不明にならないためにも、認知症の家族だけではなく、誰もが認知症について正しく理解して、協力できるような社会を実現していくことを求められるのかもしれませんね。
【参考資料】